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「戦うのは好きじゃないとか、戦いたくないとか、今まで散々戦っておいて、人殺しておいて、言うセリフじゃないのかもしれない。けど、俺だって死にたくない。
それに、戦わないと、俺を狙う理由も、イヴンダートのことも、何もわからない」
ぽつぽつと、狼は心の中を話す。
今日はよく喋る日だ、と龍一は相槌を打ちながら余計なことは言わずに聞く。
「俺を狙う理由も、イヴンダートのことも、あいつらの狙いも…戦わなきゃいけない理由も、召喚術とか、超能力とか、誰も知らないことを知るために、俺は…」
狼は目を閉じて言う。
「俺は戦う」
そして、また薄く目を開いた。
「イヴンダートを全滅させてでも」
その声に、今までになかった殺気を感じて、龍一は思わず狼の顔を見た。
「俺だけが、ランダーだけが戦ってるなら、全滅させる必要はないけど、あいつらは一般人も狙う」
「ちょ、ちょっと待て、そんなことがあるのか?一般人を狙うって?」
初めて聞くその情報に、龍一は狼に詰めよった。
「ごく稀に、だけどな。一般人ともちょっと言い難いけど。
数は少ないけど、超能力者の中には、能力が覚醒する前から超能力の素質があるって解る場合があるんだ。その中でも特に強い能力の素質を持っている人を、イヴンダートは狙うことがある。…俺もそうだった」
「そう…だったのか」
狼は今まで自分の過去を誰にも、龍一にすら話したことがなかった。だから、それは初耳だった。
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