イヴンダートの狙い

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「ランダーもそういう人たちを保護する活動をしているけど、イヴンダートに先を越されれば殺されてしまう。素質があるって言っても、能力が覚醒する前はただの人間なんだ。普通、抵抗できずに何もわからないまま死んでしまう」 「狼は、どうやって生き残ったんだ?」 「襲われたそのタイミングで能力が覚醒したんだ。だから、なんとか生き残れた。その後すぐにランダーに保護されて、そのままここにいる。 俺は運がよかったんだ。でも、そうやって覚醒前に殺されてしまった人はたくさんいる。それに俺の場合は、周りにいた本当の一般人にも危害が及んだ。 俺だけを狙うんならそれでいい。だけど、周りにいる何の関係もない人が巻き込まれるなら…俺は、イヴンダートを全滅させてでも、それを阻止する。」 狼は相変わらずの無表情だが、その声にはやはり殺気が籠っていた。 龍一は知っている。狼は友達思いで、優しい。だから、ここまで強く、殺意を抱くのだろう。 狼の白銀の髪が、今は暗くないのに、いつもより光って見えた。 そして、薄く開いているその目の奥が、揺らいでいるような気がした。 迷いや葛藤など、そういった類の揺らぎではない。 強い意志が、心の中だけには抑えられなくて、瞳に溢れて揺らしている…龍一にはそう見えた。 「……ん?」 「…どうかしたか?」 「いや、なんでもない」 しばらく狼の瞳を見続けていた龍一は、その目が色を変えたように見えた。 血のような、真紅に。 しかし、それはほんの一瞬で、今は普通に黒い目なので、見間違いだったのかもしれない。
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