過去と傷

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時間が経ち、本当の昼休憩になり、食堂に人が集まりだす。 訓練を終えた虎太郎と鴉鎚と合流し、一緒に昼ごはんを食べる。 午後のペア訓練は、いつも通り行われた。 前回は、どこかに潜む、姿の見えない、数もわからない敵を二人で協力して倒すという訓練だったが、今日は敵の姿は見えていた。 狼は昨日、大勢に囲まれた時の対処の訓練をしたと言っていた。それと同じような訓練なので、最近の狼の訓練は数を相手することを重点に置いているようだ。 昨日の狼の個人訓練と違うのは、味方がいることと、敵の数が圧倒的に今日の方が多いというところだけだ。 「狼、跳べ!!」 狼は龍一の声に反応し、龍一の方は一切見ずに高く舞い上がった。 敵の視線が狼に集中する。その一瞬を狙って、龍一は狼の下を高速で通り抜け、敵の集団に体当たりをする。 龍一が移動した距離は短かった。慣れていない人には瞬間移動に思える程のスピードで突っ込まれ、敵は吹っ飛んでダウンする。 その後方で、トン、と軽やかに着地した狼は動きを止めた。 敵は、狼が何を考えているのかわからず、すぐには動かなかったが、数秒停止した後に、4人ほど一気に武器を構えて狼に突っ込んできた。 停止していた数秒で、敵がアイコンタクトで動くか否かの確認と、動くタイミングを合わせたのを、狼はしっかりと見ていた。
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