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「とにかくほら、帰るぞ。お前が抜け出すのはいつものことだけど、それでも俺みたいに心配してる人がいるんだからな」
「うん、ごめん。帰ろう」
狼と龍一は方向転換して、研究所 ―拠点の方に歩いていく。
「毎回思うけど、何で毎回龍一は俺の事見つけられるんだ?夜で昼より人は少ないとはいえ、一回くらい見過ごして通り過ぎてもおかしくないと思うんだけど」
狼は、自分が拠点を抜け出すと、そう時間をかけずに龍一に見つかるので、自分を探してあちこちに行っている訳ではないと知ってはいた。
龍一は、簡単な事だと狼を見た。
「お前の髪の毛は目立つ。光ってるし」
ああ、と狼は納得する。この白い髪は目立つだろう。それに、この髪の毛は若干光を放っていて、暗い所にいるとぼんやりと光っているのがわかる。
白っぽい銀とも言えるかもしれない。
「帰ったら俺の髪の毛見てくれよな!」
「うん」
狼が龍一の髪の毛を見るのは日課になっている。
強い能力を持つランダーは、力を使い過ぎるとだんだん髪の毛が変色してくるのだ。
その色は個人個人で、赤もいれば金もいる。ランダーの組織のボスは紫色になった。
多種多様だが、稀なケースもある。狼の白は他にいないだろう。
能力を使い初めて2年も経てば、完全に色は変わる。
狼は能力に目覚めてまだ1年経つか経たないかといったところだが、一度能力を使っただけで髪の毛が完全に白くなってしまった。
龍一は能力に目覚めてまだ半年程だ。髪の色に変化は見られないが、訓練で毎日能力を使っているのでそろそろ変化が始まってもおかしくない時期だろう。
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