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狼と龍一は、明日の訓練のことを話しながら拠点に戻る。
拠点は大きな建物だ。もう姿が見えている。
だが、そこで2人は異変に気付いて立ち止まる。
「気をつけろ」
「わかってる」
狼の小さな声の警告に、龍一は同じく小さな声で返す。
異変に気付いたことを悟られないように、店に陳列されているものを見るフリをする。
後方には街を歩く人がいる。だが、前方には全くいない。
いくら夜で人は減っていても、この通りに人がいなくなることはまず無い。
だから、前方に人が全くいないのはおかしいのだ。
「前方3人、後方4人…左右の店に1人ずつってところだな」
狼は気配を読んで、無表情を保ちながら龍一に伝えた。
そして、拳を握って振り返る。
見えないはずの人間と、目があった。
やばい、とその人間が思った時には、既に狼に顔面を殴られて吹っ飛んでいた。
店の陳列棚に突っ込んで、消えていた姿が見えるようになる。
「姿消し、ねえ。そんなことしても意味ねぇの解ってんだろ?」
狼は龍一と背中合わせになって、こっちを見ている複数の敵に言う。
さっき敵が棚に叩き付けられた音を聞いて、そして狼の髪の毛を見て、一般人が騒ぎ出し、そして離れていく。
ランダーとイヴンダートの戦いだ、と。
狼と龍一に攻撃を仕掛けてきたこの複数の人間は、イヴンダートと名乗る組織の者だ。
この世界を征服する為に、そしてそれを妨害せんとするランダーと対抗する組織。
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