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狼の言葉はもっともだと考えたのか、イヴンダート達は姿消しを解除する。
目視できるようになったイヴンダートは、狼が気配を読んで数えた人数とその位置とが一致していた。
龍一は拳を握って片足を引いた。
「そんじゃ行きます―か!!」
龍一の手前にいたイヴンダートに龍一の言葉の最後の文字が聞こえた時には、龍一はすでにイヴンダートの前にいて行動を終わらせていた。
イヴンダートは龍一の拳を腹に思い切り喰らって吹っ飛んだ。
「移動系…いや、能力上昇系の能力者か!」
「ご名答」
イヴンダートの推測は正解だ。
龍一の能力は、《高速移動》。自身の移動スピードを上げ、人間離れしたスピードで動くことができる。
瞬間移動なら移動系の能力者だが、龍一は瞬間移動したわけではなく、その足で走っていたのだ。
さっきの攻撃、実は龍一はそれほど力を入れた訳ではない。
目視できるスピードでゆっくり殴るのと、目に見えない程勢いをつけて速く殴るのとでは威力が段違いだ。
龍一は能力を使い、拳に速さを上乗せして威力を上げたのだ。
「次!」
龍一は拳を構えてイヴンダートを挑発する。
「さて、俺も動くか」
龍一の先制攻撃をのんびり見ていた狼はようやく動く。
仕掛けてきたイヴンダートの槍を余裕で躱し肉薄する。
狼の拳がイヴンダートの顎を捕らえた。
舌を噛んだようで、口から血を撒き散らしながらイヴンダートは倒れる。
それを見ていた別のイヴンダートが眉間にしわを寄せて狼を見た。
「お前…能力を使っていないな!?」
髪の色から、狼が能力者であることは明白だ。
だが、イヴンダートは自分たちの技術で狼の動きを測定しても、能力が表示されない。
つまり、狼は能力を使っていないということだ。
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