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「はぁ?」
狼はイヴンダートの言葉を嘲る。
「お前らごときに能力使うかよ」
「何だと!?」
狼の発言にイヴンダートが怒る。
だが狼はその態度を変えない。
「俺の能力は自在に扱えるものじゃないし。故意に使うこともできるけど、そうすると痛いんだよ。だから使わない」
狼は左手をぱっぱっと振った。
薄暗くてイヴンダートには見えないが、手の甲の親指の下に傷痕がある。
能力を故意に使う時に、この傷は刻まれる。
「お前らみたいなのには能力使わなくても余裕で勝てるしな」
狼の挑発に、イヴンダートは乗せられて憤慨する。
「ふざけるな!我らの力を見せてくれよう!」
立っているイヴンダートが一ヶ所に集まり、槍を地面に突いた。
「きたきた」
龍一は狼の隣に来て、イヴンダートの様子を見ている。
これを見れば、このイヴンダートがどの程度(の雑魚)なのか解る。
だから狼はイヴンダートを挑発したのだ。
『門(ゲート)を開け!我らはイヴンダート!』
イヴンダートたちが声を揃えて槍をまた地面に突く。
突いた槍の下に、幾何学的模様が描かれていく。
魔方陣、というのだろうか。それは滑るように、槍の下から狼と龍一の前に移動した。
『出でよ!混沌の淵に住まいし魔獣!《アルバイア》!』
魔方陣が光を放ち始める。
陣の中心が盛り上がり、黒い何かが這い上がってくる。
「おっ、アルバイアって割りと上級じゃなかったか?」
テンションの上がった龍一に、狼は頷いた。
アルバイアは上級魔獣であり、実力者でなければ召喚できない。
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