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そして、その魔獣は狼と龍一の前に姿を現した。
金色の瞳がギラギラと光るその頭には大きな耳。
グルル…と呼吸音を響かせる大きな口に鋭い牙。
真っ黒な体毛に覆われたその体は、人狼のような形をしている。
満月の荒野の覇者、アルバイア。
その姿を見れば、普通の人間は誰しも恐怖し、逃げ惑う。
能力者であっても手強い敵だろう。
一そう、これが本物ならば。
「ちっ、何だ偽物か。ちょっと期待したのによ」
やれやれ、と龍一がため息を吐く。狼も全くもって同感だ。
「まあ、ちょっと考えれば偽物って解ったかもな」
「あー、確かに」
アルバイアに興味を失った狼と龍一は目を離して空を見た。
「な、何を言う!これは本物のアルバイアだぞ!」
イヴンダートの1人が狼と龍一に向かって喚く。
「アンタらは本物召喚したつもりでもこれは偽物だ」
「空を見てみろよ」
狼は空を指差した。
「アルバイアは上級の魔物で、簡単に人間に服従しない。召喚できる日は限られてる。そう、満月の日だけなんだよ」
狼が指差した空に輝いている月は半月。満月ではない。
「満月でもない日に召喚できる訳ないだろ?」
イヴンダートはこの事を知らなかったらしく、「そ、そんなはずは…」と狼狽えている。
その様子を見て龍一は勘付いた。
「召喚術が専門のお前らより俺たちの方が詳しいってことは、アレか。お前ら新人だな」
ぎく、とイヴンダート達の動きが止まった。どうやら図星のようだ。
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