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 カイ・チャッタニンが腕を組むと、タンカーをつなぐワイヤーロープのように前腕の筋肉が浮きあがった。力だけなら、この男がクラスで一番かもしれない。  テルが首をゆっくりと回しながら立ちあがった。カイが薄笑いをしていった。 「やるのか」  ジョージはこの状況をおもしろがっているかのように、すこし離れて眺(なが)めている。なんとかこの場を収拾しなければならない。タツオはいった。 「寮内でのケンカや暴力沙汰(ざた)は禁止されている。懲罰(ちょうばつ)の対象になるぞ」  発覚すれば両成敗(りょうせいばい)で2週間の自由時間没収と奉仕活動が課せられるだろう。便所と風呂場掃除の日々だ。ケンカの当人は窓のない懲罰房にいれられるかもしれない。テルが片方の唇(くちびる)をゆがめた。笑ってるようだ。 「誰がケンカするなんていった? ちょっとしたスポーツを楽しむだけだ。おい、そこのでかいの、こっちにこい」
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