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井戸は静まりかえっていた。
「ふう、誰もいない……当然か」
クシュルは井戸の近くの廃屋の壁にもたれかかった。
さて、ここで二人を待つか。そう思ってふと前に視線を向けた時である。“それ”はいた。
少女が一人、巨大な石仏の顔の上に座って両足をぶらぶらさせている。無論アウラではない。
「誰?……いや、それよりもそんな高い処に座って落ちたら危な……」
クシュルがそう言いかけた時である。
「ねえ、キミ」
あどけない声で少女は言った。
「何をしに来たの。幽霊見物?」
「……それも正直あるよ。だけどもう一つ。何故こんな大きく立派な寺院がこのような廃墟となってしまったのか。そこに興味があったんだ」
クシュルは正直に答えた。
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