第3話

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 少し落ち着いたところで、耳に入ってきたのは、テレビの音。夕方のニュースだ。画面の左上には、六時十五分の表示。  アパートに着いてから十五分くらいしか経っていないんだろう。けど、僕にはもっと長い時間に感じられた。  エアコンが効いて快適になったにも関わらずかいている汗が、さっきまでの焦りと緊張を表している。  テレビでは、アナウンサーが全国の気温を伝えていて、これから本格化する熱中症への対策を何度も口にしている。  そして、『次は、この時期に欠かせないお菓子の話題です』と、深刻な声から一転、明るい声で話題を変えた。それに合わせて移されたのは、新作アイスの特集だった。 「あっ!」  叫び声みたいな声を出し、僕はキッチンに急いだ。  放られたままのスーパーの袋。中からアイスの袋を探して掴むと、予想通り、ぐにゃりとした感触が手に伝わってきた。中身は半分くらい溶けているだろう。  冷やして固めれば、食べられるかな。  一応、冷凍庫に入れ、他に買ってきたものも冷蔵庫に収めていく。最後に袋が置かれ、結露でびしょびしょになっていた床を拭く。  これで、一息つけそうだ。
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