第3話

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 昨日はただ運が良かっただけ。僕がちゃんと調べておけば、気づいていれば、今日、こんなことにはならなかった。  暑くなってきたら、じゃなくて、その前からエアコンをつけるべきだったんだ。夏の午前中は、あっという間に室温が上がってしまうんだから。  外に出る時も、時間帯を気にしなきゃいけなかったんだ。  ―――!  背後で、音がした。  反射的に振り向いた先には、相変わらず横たわったアゲハの姿。  ギシッと椅子の軋み音をさせて立ち上がり、ベッドまで近づく。頬の赤みは引いている。表情も穏やかになっているし、呼吸も落ち着いている。  頬が緩むのがわかる。 「ちょっと、ごめんね」  まだ眠っているアゲハに一方的な断りを入れて、僕は身体をかがめ、左手の甲で頬に触れる。  うん、体温も下がっている。  触れた手を額に置いてあるハンドタオルに伸ばすと、予想通り、温くなっていた。タオルを冷やし直すためにキッチンに。さっき作った氷水は冷蔵庫に入れてあるから、まだ氷は残っていると思うけど、今の状態を見ると、もうそんなに冷たくなくてもいいような気がする。  逆にこれ以上体温を下げると、今度はそれが原因で動けなくなるかもしれない。
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