第3話

2/17
前へ
/17ページ
次へ
「今はまだ平気だけど、このあと暑くなるから、そしたらエアコン使ってね」  午前八時過ぎ。僕は、バイトに出かける前に留守番の仕方をアゲハに教えていた。  僕のバイトが午後五時までだから、家に着くのは午後六時くらいだということや、訪問客がチャイムを鳴らしても無視してもいいことなど。 「エアコン……」  あれだよ、と僕は天井近くに設置されている四角く白いものを指差す。そして、リモコンを持ち、「このリモコンのこのボタンを押すと、冷たい風が出るんだ」と、説明する。  アゲハは僕の手からリモコンを取ってボタンを押した。ピピーという音とともにエアコンの通風口が動き出した。 「うわっ」  そして、ゴゥと冷気が吐き出される。 「ゴーっていってる」 「手を翳してみるとよくわかるよ」  僕は、エアコンの通風口の下に手を翳す。アゲハも僕に倣って手を翳すけど、身長の低いアゲハは冷気を感じられていないらしく、首を傾げた。  僕は、椅子をアゲハの近くまで引きずって、乗るように促した。 「あ。つめたい!」 「暑くなったら窓を閉めて、今やったようにリモコンのボタンを押すんだよ?そうすると、この冷たい風が出てくるから」 「暑くなったら……。うん、わかった」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加