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「…なんでお前がここにいるんだよ?」
一瞬目を見開いてからいつも通り眉間にしわを寄せた同僚は、低い声で呟いた。
「はぁ?どこにいようが私の勝手でしょ?てかそれ、こっちのセリフよ。」
ホントにこの男はこ憎たらしい言い方をする。
職場の同僚である小野田は、半そでTシャツとジャージの下という格好で、いつもの
スーツ姿とかけ離れててちょっと新鮮…と一瞬思ったところ、いつも通りの冷たい物言いで突っ込まれたので、つい反射でこちらも噛みついてしまったのもいつものことだ。
金曜の夜7時半。この時間のマクドナルドは、結構混んでおり賑やかだ。仕事帰りの会社員はもちろん、学生が多いのはこの辺りに大学と短大があるからだ。
小野田は、今受け取ったばかりのトレイを持ったまま一瞬周囲を見回してから佐和に視線を戻すと、「ひとりか?」とやはり不愛想に訊いてきた。
「だったらなによ?一人で悪かったわね。」
「ならここ、いいな?」
佐和が答えるまでもなく、向かいの席に小野田が座る。
職場の女子社員の人気を集めるだけあって、背は高く、スタイルもいい。
まだ噛みついてやろうかと思ったけど、首筋や顔に滴る汗が似合いすぎて憎まれ口をきけなくなった。
「なんで…そんなに汗だく?走ってでも来たわけ?」
「寮から走ってきた」
ここから寮までだと3キロといったところだから、20分弱のジョギングか。
「お前は?」
佐和はポテトを一本、口に運びながら、「仕事あがり」と呟いた。
本当は、疲れてていつもみたいに憎まれ口に付き合う気力も体力もない。いつも通りお気に入りのクォーターパウンダーのMサイズセットを頼んだものの、まだポテトとアイスティーをちびちび摘んでいたところだ。
ほうっと小さくつい溜息をついてしまい、慌てて繕うように声をあげる。
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