3618人が本棚に入れています
本棚に追加
《仕方がない、そちらに行くから少し待つように伝えてくれ》
覚悟を決め使者の男に会いに行くために椅子から立ち上がった。
店に上がり男と目が合う。
容姿は映像で見ていた通りだ。
短めに切りそろえられた黒髪に黒い瞳、この世界にくる前に住んでいた国の人種と変わらないように見える。
顔は一言で言えばイケメン。
整った顔の輪郭、目、鼻、口。
これでランク10の英雄様(か勇者様)だ。モテモテだろう。
…うらやまし…くなんてないぞ!絶対に。
そして下のほうに目を向けていくと腰のあたりで目が留まった。
念のため言おう、股間ではないぞ。
腰の左側に見えていた剣だ。
正確に言えば剣ではなく『刀』だ。
(こいつ、国の使者といいつつジポングの人間か?)
容姿といい刀といいジポング人であろうことはなんとなく理解できる。
(しかしなんでそんな奴がこの王国の使者として…)
しかし王国からの使者という相手に対していつまでも観察を続けるのはいい方向に向かないだろうと思い話しかけた。
「ようこそ、私はここの店主をしております、マサと申します。生憎と姓はありません。」
相手もこちらを値踏みするかのような視線を向けていたが声をかけられ反応する。
「これは失礼した、俺はファリアテリア王国のギルドに所属している緋野刀維(ヒノトウイ)と申します。王国からの依頼によりこちらに来ました。」
ギルドと依頼という言葉に内心恐怖を抱く。
やはりばれたか、という思いが胸をかすめるが
緋野という男が言葉を続けた。
最初のコメントを投稿しよう!