第1話

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第1話

マンションから見える遠くの山は、春になると満開の桜で綺麗なピンク色に染まる。 そのピンクが緑へと移り変わる頃。 弟が突然家を出ていった。 世間で言う''家出''とはまた違うような。 だけど、やっぱり家出と変わらないような。 『姉ちゃん。 ちょっと東京行ってくるけど、落ち着いたらまた連絡するから心配せんで。 まーちゃんと仲良くしててよ。 心機一転!番号変えた。 0*0-****-****。 じゃーな。』 だって。 仕事に出勤する日と同じ時間に目覚めた朝にリビングで見つけた。 「はぁー?」 寝ぼけ眼で見たから見間違いかも、なんてことなくメモの内容は変わらないものの目をこすってもう一度じっくりと読み返した。 ここはマンションの一室。 防音効果も施してあって、大きな声を出しても隣人への迷惑はかからない。 ただすぐ隣の部屋にだけは大いに影響があった。 「何?朝から大声出して」 ひどく寝癖がついた麻知(まち)が慌てた様子で寝室から出てきた。
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