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「やけに空がぼやけてやがる、不気味だなあ。こんな時は帰るに限るわ。あったけえ我が家にな。」
いつもは男の足音や、元来大きな独り言の声が響く夜道。しかし今は、件の虫の鳴く音や羽音でかき消されている。
「寒い事には寒いんだがなぁ。お、ボロ神社。こんな夜に見ると、いつにも増して不気味!って、こんな言い方は罰当たりか」
人や獣が通る草木を踏み倒された細い道の先に、もう永らく人のいない神社がある。
なんとなく神聖な心持ちになる気がするので、ぶらぶらと歩いて眠気も出てきたらそこを見て、達成感に近しい感情を覚えたまま帰るのが男の日課だった。
とは言っても、心持ち程度だが。
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