第1話 馬鹿だよ

6/7
前へ
/59ページ
次へ
「ああ。他の女・・・探すとかないのか?」 そう言われても、俺の中には紗江しかいない。 他の女と付き合えるなら・・・・・・ 紗江以外を好きになれるなら・・・・・・ こんなに苦しくないのは分かっている。 でも、紗江が身近にいるから・・・・・・ 好きな女が近くにいるのに諦めるって・・・・・・ 無理だ。絶対に無理だ。 諦める為には、嫌いになるしかねえじゃねえか。 俺にそれは出来ない。 だから、ヒロの考え方が出来ねえんだ。 「あれ以上の女って、いるか?」 「いる!」 即答で自信満々で答えるヒロ。 そもそも考え方が気に入らない。 プラス、今のヒロの鼻を膨らませた顔が気に入らなく、大人げなく怒鳴り返した。 「いねぇ!」 思ったより大きな声が出てしまった。 その大きな声で、ヒロも興奮し、負けずと言い返してきた。 「いる!」 「いねぇ!紗江以上は!」 「うるせぇ!それは、お前の事だろ!俺は、紗江より景子の方が好きだからな」 「景子って、お前の彼女は今関係ないだろ!」 「お前が紗江以上の女はいないって言うからだろ!」 「だからって、自分の女を自慢すんなよ!」 「うるせえっ!現実を見ろって言ってんだよ!紗江は和木さんと付き合ってんだぞ!お前がいくら紗江が好きでも無理って分かってんだろ!!奪う勇気とかってあんのか?今も紗江を追いかけなかっただろが!」 この質問で、俺は一気に叩きのめされた。 返す言葉すらなかった。 「・・・」 俺の沈黙で、ヒロは落ち着きを取り戻し、静かに言った。 「奪う勇気もないくせに、いつまで引きずるんだよ!次に進むしかねぇじゃねぇか」 新たな一歩を踏み出させようとしてくれるヒロ。 俺の事を思っての言葉に黙るしかなくなった。 ヒロの言うとおり、俺には奪う勇気がない。 「しょうがねーだろ!・・・あれ以上の女なんて・・・」 「紗江以外考えられねーなら・・・振り向いてもらいたいなら、態度で示せよ・・・その努力が無ぇんだよ」 「態度・・・努力・・・か」 「無愛想なお前には難しいか?」 「いや、想いは二度も伝えた・・・それに・・・」 「なにかありそうだな。話してみろよ」 「・・・あぁ」 さっきの紗江との会話を事細かくヒロに話した
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加