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「へ、いや、いいよいいよ、顔を上げてよ!!いきなり話しかけた俺が悪いんだしさ……それより、桐下さん。このゲームについて何か知らない?俺、何が何だかさっぱりでさ」
彼女を怯えさせないようにラフな感じで話を繋げる。こういう積極的な行為は得意ではないので、顔が引きつっていないか心配である。
「え……、そう……なんですか………。えっと、私……何も知りません……」
彼女は目をそらしそう答える。
「そうなんだ。ごめんね、いきなり……じゃ、俺行くから」
彼女に一度手を振り、立ち去ろうとする。
そのとき、ぎゅっと何かが俺の服の裾を掴んだ。
「へ……あ、あの……私も一緒に、いいですか?私、不安で仕方ないんです……」
彼女は何に怯えているのか、ビクビクと体を震わせながら、助けを求めるような眼差しで俺を見つめる。
「あ、あぁ、いいよ!全然!!」
そんな顔をされて、断れる俺ではなかった……。
こうして俺達は、一緒に行動することになった。こんな美女と一緒に街を歩けるなんて、夢のようだ……と、はしゃいだのは束の間……。
嫌でも気づいてしまう。
他の人間には、俺達の姿が見えていないということを……。
でも、そこまでの驚きはなかった。
自分が死んでいることは分かっていたし、幽霊みたいなものかなぁとは最初から察していたからだ。ただ、ここまで完全に認識されないと、精神的に少し堪えるというだけの話だ。
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