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桐下は目的地を、どこか焦った面持で見つめると、グッと歩道橋の手擦りを握りしめる。
そのとき―――。
「ちょっと待って貰おうか……お二人さん」
背後から少し濁りの混ざった不気味な声が聞こえる。
俺は額に汗を溜めながら、声の主の方に振り向く。
そこには俺達と同じ、淡いオレンジ色の囚人服のようなものに身を包んだ男が歩道橋の柵に座っていた。
「誰だよ……おっさん」
俺は男から殺気のようなものを感じ、男に焦点を合わせる。
緊張が体を締め付け、冷や汗が流れる。でも気を抜くことは出来ない、視線を逸らせば殺られる、そう自分の中のなにかが警告していたからだ。
「良い目だ。殺すには惜しい………だが、これは戦争だ。負けたらそこで、即GAMEOVER……だから、悪く思わんでくれよ」
男はそう言うと、フラフラと立ち上がる。
そして、背後から歩いてくる男性に気が付くと「二カッ」と不気味な笑みを浮かべた。
「はっ……天城くん、逃げて!!」
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