鉄仙は似合わない

7/9
前へ
/35ページ
次へ
――「新しい花を買ったんだね。」 スーツのネクタイを緩めながら、稜が言う。 「鉄仙よ。洋名をクレマチス。綺麗でしょ?」 「ああ、そうだね。」 あまり花に興味がない稜の返事はそっけない。 私はあなたが今、何を思っているのかわからない。 『稜、あなたは知っているの?』 そう問いかけたい気持ちをぐっと我慢する。 『美亜ちゃんはあなたのことが好きなのよ。』 『あなたは彼女のことを、本当に妹のように思ってる?』 ベランダの鉄仙が、失いたくなければ何も問うなと訴える。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

97人が本棚に入れています
本棚に追加