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いつの間にか、ずっと相模くんとつないでいた手が外れていた。
相模くんが見せてくれた甘い空気は、もうどこにも漂っていなかった。
「紗南ちゃん…」
心配そうに私を呼ぶ、梢の声が聞こえた。
…やっぱり。
2人の姿から目をそらせて、クラスメイトに紛れようと後退する。
やっぱり、こうなるよね…
何度思い知らされるんだろう、私は。
「さな」
でも。
後退った私を、相模くんの低い声が呼び止めた。
「話してくる」
相模くんの漆黒の瞳がまっすぐに私をとらえる。
「戻ってくるから、ここにいろよ」
大きな手で、私の頭を一撫でする。
胸の奥が熱くなって、馬鹿みたいに何度も頷いた。
…戻ってくる。
相模くんは目に優しい光を浮かべて私を見ると、さくらさんを連れて教室を出て行った。
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