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「…どうぞ」
文化祭中の生物準備室は、ひと気がなく静かで、文化祭のざわめきが遠くの出来事のようだった。
「…ごめんな」
私の前にミルクの入ったコーヒーを置いてから、先生が神妙な顔で頭を下げた。
言葉が出なくて、ただ首を横に振る。
話したいこと、聞きたいことがあったはずなのに、いざとなると何から口にしていいか分からない。
「相模のこと、許せなくて。お前を放ったらかして、のうのうとして、挑発しても、余裕で。…本当に好きなのかよ、って」
先生がうなだれながら、絞り出すように話す。
…胸が痛くて、うつむいてコーヒーカップの水面を眺めた。
相模くんが余裕なのは、想いが違うから当然だ。
相模くんには、他に好きな人がいるから。
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