First.25

9/11
前へ
/264ページ
次へ
「…さくら、さんは?」 相模くんが私を見てくれるから、不安なことが口をついて出てしまう。 「帰った」 特に表情を変えないまま、相模くんは淡々としている。 「…沙羅、さん、は?」 心臓が嫌な感じにドクドク鳴った。 立ち入っちゃ、いけない、領域なのに。 相模くんが目を見開いて私を見たから、やっぱりダメだったことを悟った。 愚かな私。 優しくされたからっていい気になって、触れちゃいけないところにまで、踏み込んだ… うつむいて、身を引く。 決定的なことを告げられるには、まだ勇気が足りない。 「ちょっと待て」 相模くんの腕の中でもがくと、我に返ったのか、相模くんが腕に力を込めた。 「沙羅、って…」 相模くんがマジマジと見つめてくるから、いたたまれなくて奥歯を噛み締めた。 身の程知らずにもほどがある。
/264ページ

最初のコメントを投稿しよう!

356人が本棚に入れています
本棚に追加