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「やっぱり似てます」
私の顔をじっと見ていた祐一君が爽やかに微笑む。
「僕の好きだった安野先生にすごく」
「ありがとう、ございます」
まっすぐな視線から逃れるように俯きながら、左手を隠すように右手を重ね合わせた。
祐一君に、左手の薬指にはまった指輪を見られたくない。
そんな気持ちが芽生えた理由は分からないし、考えたくもないけれど。
「あの、少しだけ時間ありますか」
その提案を、リンの母親ならキッパリ断るべきだ。
既婚者だとハッキリ告げるべきだと、知っている。
だけど、頭で分かっていてダメだと信号を送っていても、それを無視する場合だって、人間にはある。
危険だと立て札がしてあっても、ワザと道を踏み外すことだってあるの。
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