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深夜12時。
遊び疲れたリンが、ウサギのぬいぐるみを抱きしめながらスースーと規則正しい寝息を立てる。
ふわふわの頬に、そっと唇を寄せる。
一日で一番、幸せを感じる瞬間。
この子は私だけの子。
この子の為に生きている。
私の世界の全てだ。
そのことが泣きたくなるほど嬉しくて、少しだけ悲しい。
今日には特に悲しいという気持ちが、いつもより少し大きくなる。
リンの真横に寝転びながら、枕元に転がっている携帯に手を伸ばそうとしたら、近づいてくる人の気配を感じその手を布団の中に隠した。
「なあ」
私の背中に少し出たお腹をくっつけるように密着している夫。
伝わってくる生温かい体温と、触れている感覚がジワジワと不快感を呼び寄せる。
「いいだろ」
耳元で囁かれた義務の誘い。
断るのも面倒でいつもだったら承諾しているけれど、今日だけはどうしてもそういう気になれない。
「疲れてるの」
一番無難な断りを述べて、更にリンの方へと身体を近づける。
さっさと諦めてほしい。
今日だけは祐一君を想いながら眠りたい。
あなたの脂肪たっぷりついたお腹なんて見たくないのよ。
そんな願いも空しくいつもに増してしつこい夫。
私のお腹に手を伸ばし、ボタンとボタンの隙間から手を差し込んだ。
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