昼下がりの身勝手

18/30
前へ
/30ページ
次へ
深夜12時。 遊び疲れたリンが、ウサギのぬいぐるみを抱きしめながらスースーと規則正しい寝息を立てる。 ふわふわの頬に、そっと唇を寄せる。 一日で一番、幸せを感じる瞬間。 この子は私だけの子。 この子の為に生きている。 私の世界の全てだ。 そのことが泣きたくなるほど嬉しくて、少しだけ悲しい。 今日には特に悲しいという気持ちが、いつもより少し大きくなる。 リンの真横に寝転びながら、枕元に転がっている携帯に手を伸ばそうとしたら、近づいてくる人の気配を感じその手を布団の中に隠した。 「なあ」 私の背中に少し出たお腹をくっつけるように密着している夫。 伝わってくる生温かい体温と、触れている感覚がジワジワと不快感を呼び寄せる。 「いいだろ」 耳元で囁かれた義務の誘い。 断るのも面倒でいつもだったら承諾しているけれど、今日だけはどうしてもそういう気になれない。 「疲れてるの」 一番無難な断りを述べて、更にリンの方へと身体を近づける。 さっさと諦めてほしい。 今日だけは祐一君を想いながら眠りたい。 あなたの脂肪たっぷりついたお腹なんて見たくないのよ。 そんな願いも空しくいつもに増してしつこい夫。 私のお腹に手を伸ばし、ボタンとボタンの隙間から手を差し込んだ。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加