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「お前さ」
夕食時、ポテトサラダの人参を箸で突いていると、ふいに前方から無愛想な声が飛んできた。
「何?」
「いい加減にしろよ」
「何が?」
「それ」と夫に指を差されたのは、右手に握りしめていた携帯。
呆れ果てたような視線を向けられて、思わずテーブルの下に隠した。
「最近、おかしいぞ」
「……」
「いつも上の空だし、リンのことだってちゃんと見てないだろ」
あなただって見てないじゃないと反論したくなったが、話が長引くのも面倒で下唇を噛んでグッと堪えた。
「ある程度はいいけど、それじゃ依存症だろ」
「えっ」
「ネット依存って、最近の中高生に多いらしいな。お前、いい年だし見っとも無いから、止めろよ」
「……」
見っとも無いって、何が?
恋をしたいと思う気持ちですか。
それとも、平凡な日常に疑問を感じるところですか。
じゃあ、私は毎日毎日、リンとあなたの為だけに生き続ければいいの。
洗濯と掃除と料理のローテーションを、永遠に繰り返していくの?
そんな生活を幸せだと感じていた自分も確かにいたはずなのに、今は思い出すことも出来ない。
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