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今日の天気は晴れ。
雲一つない青空。
こんな日は、大きなバスケットに甘めの卵焼きとタコさんウインナーとおにぎりを詰めて、どこか遠くに出掛けたい。
どこがいいかな。
海、山、川、遊園地。
きっとあなたとなら、どこだって楽しいはず。
ガシャンと玩具箱をひっくり返したリンの横に座り込み、携帯電話の画面をのぞく。
『春花、愛しているよ』
今日も甘い言葉が、私を空想の世界へと誘う。
祐一君に会いたいな。
手を繋いで、ハグをして、それから、キス。
きっと、今まで経験したことのない幸福が私の身体を包むことだろう。
「ママ、見てー」
お絵描き帳に、クレヨンで不格好な大きな丸を書く小さな手。
それを横目で見ながら、「うん」と適当な相槌を打つ。
「ママ、こっち」
リンの声。
『春花、好きだよ』
祐一君からの甘い言葉。
「ママ、ママ」
甘えた幼い声。
いつだってギリギリのところで迷っていた。
夫の手ならすぐ振り払えるけれど、まだ何も知らないこの無垢な手は手放せないと思っていたから。
だけど、今なら。
今ならば、私は彼の手を取りたいと思う。
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