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何故か。
彼にマトモな人間になれなどと私は一言も言ったことはない。
おそらく彼は、聞き飽きてきたその台詞を全く口にしない私に恋をしているのだろうが、
私は単に普通じゃない人間でいたいだけだったのだ。
そのための彼だった。
彼がマトモになんてなってしまったら…
私は、他人より自分が特別であると安心するための材料を
失ってしまうことになる。
恋愛感情というのは
相手を必要とするかどうかだから、
私と彼の恋愛は
間違ってない。と思う。
サティのピアノが響く部屋。
隣に座っている河童の彼を抱きしめた。
大人になった人間でも、
何故か暖かいミルクの匂いが鼻をつくときがある。
私はそれが好きで、その匂いを感じたときは耳たぶの裏にキスをしてやる。
産毛の感触を唇で辿ってゆく。
すると捕まった赤ちゃん河童は
麻酔銃で撃たれたように
腕の中で薄い寝息をたてるのだ。
そうして私たちは毎晩眠りにつく。
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