ストライク

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再び家に帰ってドアを開けたとき、 私はにんまりしてしまう気持ちを抑えるのに必死だった。 彼が玄関先で包丁を握ったまま 全身を痙攣させて倒れていたのだから。 「何、どうしたの!?」 「うう、う、う」 震えた呻きは言葉になっていない。 多分過呼吸だ。 もしかすると、うつ病。 私は思った。 サンちゃん先輩の彼氏より酷い状況かもしれない。 ほくそ笑みが零れそうなので口をあまり開けないように 私は声をかけて抱き抱える。 「どうしたの、ごめんね出ていって。話してみて?」 彼は荒い吐息まじりに ぽそりぽそりと一生懸命話そうとしてくれた。
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