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窓辺に腰掛けていた少女は虚ろな目をして外を眺めていた。
視線の先に少女の家の裏庭がある。
背の高いポプラ並木が街路樹として家を取り囲み、綿毛の種子を風にのせ、散りばめ、きれいに刈り揃えた芝生の上に着地させていた。
庭は季節外れの雪でも降ったかのように真っ白になっていた。
春の終わりを感じた少女は深いため息をつき、景色を見るのをやめ、髪をいじることに没頭した。人差し指に髪をクルッと巻き、手を放して戻すという行為を反復して時間を潰す。
コンコン……。
「入るよ」父親の声が聞こえても少女は返事することなく、指に髪を絡める仕種をやめようとはしない。「亜里沙、準備はできたかい?」柔和な顔で尋ねる。
「できてるわ」
それまで空虚感に苛まれていた少女の表情が引き締まっていた。気の強そうな瞳でまっすぐ父親を見詰め、大人びた口調で応える。
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