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「すいません」
運転手は亀のように首をすぼめて車を再スタートさせる。
交差点を右折してさらに信号で左折して100メートル走ると三角屋根の教会が見えてきた。
すでに黒い服を着た人たち数名が亜里沙たちの乗っている車に気づくと軽く会釈をしてくる。
教会手前の駐車場に車を停め、亜里沙とその父親は手を繋いで歩きはじめた。運転手はずっと頭を下げたまま見送る。
「お父様、もうひとつお願い事が増えたんだけど」
「なんだい?」
亜里沙が囁くように言ってきたので父親は膝を折って耳を傾けた。
「あの運転手、クビにして」
「なんだ、そんなことか。いいよ」
父親の即答に亜里沙は満面の笑みで喜びを表現した。
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