先生

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六畳ほどの生徒指導室が、ギチギチに埋め尽くされる昼休み。 生徒指導室を自分の部屋みたいに使用してんのは、体育の大畑・・・先生。 「・・・先生」 「大ちゃーん起きてー!せーとかいちょー来てるよー」 「……ん…ぁ?」 寝床をぐるりと女に囲まれた大畑先生。 短めの金髪をわしゃわしゃ触られて、覚醒しきらない眉間を怪訝そうに歪めた。 「かいちょーさん、大ちゃんに何の用ー?」 「あ。もしかして……先生好きです、的な?!」 「マジで?!だったら超ウケるんですけどっ」 …ウケるって、一体どの辺が? 冗談やめて。 この人が生徒会の顧問じゃなければわざわざこんなとこ、来ない。 「ぃたっ///」 「…声がでっけーんだよおまえ……」 いつの間にかのそっと起き上がった先生が、甲高い声で笑うその子の頭をぺシッと叩いた。 「えーっ、大ちゃん私の頭も叩いて」 「てゆーか生徒指導してよ、いろいろと」 「手取り足取りして」 キャハハって…何がそんなに面白いのか。 『アホか…』って顔した先生の顔が、まだ半分しか開いてなくてちょっと眩しそうに私を見た。 「どしたの会長ちゃん」 「池上です」 「うーわ、恐っい顔ー。かいちょーそんなんだから男出来ないんでしょ」 ・・・余計なお世話。 「おめぇら黙ってろって、…つーかなんでここにいんだよ」 「は?おーちゃんに没収されたマスカラ取りに来たんじゃん」 「したら寝てたんだもん。寝顔ちょー可愛いし」 「激写♪」 「…あ?撮影料よこせっ」 「きゃーっやめてやめてっ」 ちょっと………。 生徒に覆い被さっていいわけ? 「あのっ!!」 「ぅおっ、ビックリしたぁ…」 生徒指導するならさ、その目の前で開いてる携帯没収したら? 「…これ。今日までに集まった意見箱の中身です。ちゃんと目を通しておいて下さい。以上です」 とっとと出よう。 ここにいたら頭が5割増しで馬鹿になる。 畳の上にプリントの束を置いて出て行く背中に[あいよー]って間の抜けた返事が返ってきて、ムカッとして、ピシャンッ、と指導室の扉を閉めた。 「…なにあの態度、ムカつくー」 「かいちょー、大ちゃんに相手にされないから悔しいんじゃない?」 「以上ですって、センコーかっての」 「つーか、見ないでしょこんなん」 …くだらない悪口に感情むき出しにするなんて馬鹿馬鹿しい。
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