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クラスメートのいつもの冗談が許せないのは先生との最後が、どんどん近づいてきてるから。
「私さー…なんかちょうだいって言ったんだよね」
「ぁ、私も言った」
「したらさぁ、予約済みばっかで一番欲しい物はダメだった」
「何が欲しかったの?」
「大ちゃんがいつもしてるネックレス」
「ああーあれは欲しいわ皆」
「でしょ?売約済みっつって断られた」
「んで結局何キープしてきたの」
「…ボールペン」
「うわだっさ!!」
「まだいいじゃんあたしなんかどれもこれもとっくに手ぇついてて煙草の空箱とか言われたし」
「それ貰ってどーすんのよ」
「いいの///!!美しい思い出にすんのっ」
入場直前まで彼女達のそんな話は続いて、聞きたくないのに切なくなって、美しい思い出になんかしたくないのにそうなりそうで、こんなふうにしか終わりに出来ない情けなさに泣きそうになった。
「ちょっと早いよ泣くの」
違うの、そうじゃないって首を振ると前にいたクラスメートが入場して行ったから慌てて後を追った。
先生達の列に、細身のブラックスーツにシルバーのネクタイとチーフを身につけた先生の姿が見えたら、目が合った気がして…
先生が…私を見た気がして…
涙を…隠せない……。
隠せないよ…先生。
式が終わって教室に戻り担任の長い最後の挨拶が終わると、ダッシュするようにクラスメート達が向かった先は多分、先生のとこ…。
皆、我先にと出ていった後の教室は、ビックリするくらい男子しか残らなかった。
「あんたは?行かねぇの?愛しの大畑先生んとこ」
「…私、早水君と同じクラスで良かった」
「人の話聞いてんのかあんた」
「聞いてない…」
「聞けや」
「私の話も聞いてよ」
たくさん伝えたいことはあるはずなのに、うまく言葉にならなくて目の前に座ってる早水君の手をなんとなく眺めてた。
「…なに泣いてんの?」
「泣いてないよ」
「なんか目から出てるよさっきから」
「出てない」
「早水君に会えなくなんのがそんなに寂しい?」
「うん」
「・・・…うん、て」
寂しいよ。
寂しい…。
机の上に点々と落ちた涙の痕を見てると、早水君の手が小さなカードを机に置いた。
「…なに?……これ」
「なんだと思う?」
「……カフェバー?」
「ここに来りゃ早水君にいつでも会えるらしいよ」
「…大学の、近くだ」
「先輩の店でね、はやみんそこで働くんだって」
「…そうなんだ」
「会いに来る?」
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