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それから時が経つのは長く感じた。
授業というのは集中すればする程、感覚的には早く終われるのだがマグネットが楽しみで仕方ない優はとても授業などには集中出来なかった。
そして優が待ち望んでいた六時限目の終わりを告げるチャイムが鳴ると生徒の雑談や歩く音が重なり、大きな騒音が学校全体に鳴り響いた。
授業の合間に聞いたのだが悠がマグネットを買うのは優と同じ、発売日当日。
それを理由に放課後になると一緒に買いにいく約束をしていた。
「悠ー、買いに行こう?」
学校に疲れたのか悠は机の上で眠っており、それを起こす為に優は倒れる背中を優しく摩った。
「んーっ……、あと五分……」
「売れ来れるぞー」
寝言のように言う悠に呆れながらため息を吐いていると一つの女子の声が優の方へ向けられた。
「おっすーゆうコンビ!!二人共マグネットやるんだよね?」
聞き覚えのある声。
この声の持ち主が頭の中で想像される人物というならあまり関わりたくないのだが……。
ゆっくりと振り替える優。
そこには明里の女子グループにいる女子、翼鬼 麗奈と福井 雪だった。
優の思う予想は見事に的中していた。
福井 雪は大人しく綺麗な子なので話しかけられてもOKなのだが翼鬼 麗奈は違う。
この人は生来の変人としてこの学校に君臨しているのだ。
その理由は幾つもあるのだが優はそれを身を持って経験していた。
とある夏の出来事。
悠と優、麗奈と雪で山に虫取りに行った時の事だった。
この時の約束は目的が虫取りなだけに本来男の方から誘うものなのだがこの時は違った。
「ヤバイ、天然のカブト虫欲しい。ちょー手伝ってよ」
この麗奈の一言から生まれた約束だったのである。
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