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高校正門前。
そこは毎朝8時半になると必ず優の担任である体育教師、藤原岩体の太い腕により閉じられる。
そして今時間は8時半に迫っていた。優の姿はまだ見えない。
太い手首にはめられた時計を見た短髪の巨漢、藤原岩体は頃合いと決め、正門へと手を伸ばしていく。
学校のすぐ前まで来ていた生徒達はその先生の行動を見て更に移動の素早さを速め、正門へと向かっていく。
毎朝正門を閉じる役割を担う藤原岩体に怒られない為だ。
藤原岩体の怒りの威圧は半端なものではないと他校まで噂されてる程恐ろしいものとされている。
「はい!!閉めるぞー」
藤原岩体は伸ばした手で正門の取っ手を掴み取るとゆっくり横へスライドしていき、門を閉じていく。
閉まる前に急いで門を通り過ぎていく生徒達。
門を通り抜けた生徒達は安息をし、その表情は力が抜けたものとなっていた。
残り人三人分の間となった正門。
残り6秒で閉まってしまうというその瞬間。
スローモーションのように学校から少し離れた民家の曲がり角から人影が現れる。
それは全力で走る事で髪や服を大きく乱した魔蔵 優の姿だった。
(あれは……っ!閉めている瞬間!!)
心臓の鼓動を高鳴らせ、曲がり角を抜けた優は高校の正門を直視するとそこには岩体が門を閉める瞬間だった。
その距離およそ50m。
間に合うかもしれないという希望と間に合わないかもしれないという絶望を両方感じ取った優は更に脚の力を強め、地面を大きく蹴る。
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