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死ぬ訳でもないのにまるで走馬灯のように今までの登校を思い出していく優。 『おはよう!!』 『おはようございます』 毎朝正門を通り抜ける度に自分へ向けられる巨漢の大きな挨拶。 『最近寒いからな、風邪引くなよ』 『はい』 自分が風邪を引いているというのにそう呼びかける巨漢。 『………』 『おはようございます』 不機嫌な巨漢。 道路を走っていく間に思い出していく中、優はひたすら思った。 今はそれよりどうしても正門を通り抜ける事だと。 およそ40mは走っただろうか。 スローモーションのように感じられる岩体の閉める正門の間は残り人1人分。 ここまで来たのだから少しはその腕を止めて中に入れて欲しいところなのだが岩体の場合はそうはいかない。 『スポーツ=絶対に遅刻するな、殺されるぞ』 スポーツが基本の学校へ通っていたらしい岩体の名言だ。 迷言とも取れるその言葉を真顔で発する巨漢の男はどんな学校生活を送っていたのだろうか。 残り数m。 もはや正門は人1人が通る間を残す事なく、完全に閉まろうとしている。 そこで優は瞬間的に脳が覚醒し、ある電波信号を身体へと流し、行動させた。 脚を止め、大きく振られる優の腕。 つい一秒前までその手にあった鞄は既にそこにはなく宙を舞っていた。 それを不思議そうに見上げる岩体は残り数秒という時間でその意味を知る事となる。 ガシャン!! 何かが挟まるような音とともに閉まっていく正門の動きが止まる。 だが正門は完全に閉まっている事は無くギリギリ20cm程間を残し止まっていた。 ゆっくりとその理由を突き止める為に視線を正門へと変える岩体。 そこには優の鞄が正門に挟まり、完全に正門の歯止めとなっていた。
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