出発点

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そもそもこの人なら若干見覚えがある。 あ。この人、この間電車の中であって少し会話して、しかも就職の話を丁度良くしていたんじゃないか。 その時は確か、ちゃんと私のこと社会人だとみてくれていた。 何なんだこの人は。編集長のくせに物忘れもしやがって・・。いや確かに、あの時はほんの数十分のことだったのかもしれない。 けれど今の私のように、何か思い出すこととかないのかと思うのは私だけか…。嗚呼、私だけなんですねわかります。 とか、心の中で愚痴っていても、この人はじっとこちらをみつめている。 頬に手を添え頭を支えるようにしているが、目線は変わらずこちらを向いていて、本当は私のことを覚えているのではないかと考えたり。 「じっとみつめられると、照れるなぁ。って、まさか迷子とかじゃあないだろうね。」 否、本気だこの人と思ってしまった。 「あ、ここに配属になった子?」 眉間にしわを寄せ下を向いて考えていたその顔が、再び上がりこちらを向いたと思えば、やっと本題にいけそうな話を疑問文としてふってくれた。 私は真面目にならねばと、真剣な眼差しで今井編集長を見た。 「メランコリー文庫に配属されました。朝霧あすかといいます。よろしくお願いします!」 .
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