あんなに一緒だったのに

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 「自分を卑下する事はないって何故だ?」  「それはですね、愛とは執着だからです。アナタなら分かるかと……そうでしょう? 東野幸二」  「舞の事を言ってるのか? 分からんでもないがね……」  「また遠回しに……アナタは森谷舞に執着して挙げ句に、今誰と付き合ってるのかな?」  唇でしかないナニかに指摘された事で、幸二の感情が一気に昂り、唇でしかないナニかに対して語気を荒げ言う。  「黙れ! だからなんだ? 確かにボクは最低な動機でまなみを口説いたし、その事は否定しない! だけどボクはまなみを本気で好きになったからそうしたんだ! その事に関して嘘偽りはない!」  「クックッ……」  不意に鼻でくくったように笑う唇でしかないナニかに幸二の怒りは更に増し、語気を荒げ言葉を吐き出す。  「何が可笑しい!?」  「イエね。普通に会話が成り立ってる事に気付いたからですよ。コチラとしては、有り得ない事だからつい、ね……」  唇でしかないナニかに言われて幸二は鼻を鳴らして呆れ加減に言葉を吐いた。  「所詮は悪夢の延長だろうが、それにだ……進んで死にたい訳じゃないけど苦しみや辛さがないならソレもやぶさかでない。なんならアンタがボクをさらってくれるか? ソコに舞がいるなら喜んで行こう、地獄の底だろうとな」
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