あんなに一緒だったのに

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 カンカンカンーーーー  その日が平和だと象徴するかのような、朝の始まりを告げるフライパンをおたまで叩く金属音が鳴り響き、炊きたての御飯と味噌汁の香りが漂う。  そこはパラダイスではないが、まだ染み1つ無い真新しいダイニングキッチンで、小豆色のジャージに割烹着姿の美少女がフライパン叩きを止めてから誰かに呼び掛けをする。  「皆さんお待たせしました。朝ごはんの用意が出来ましたよ~」  美少女の呼び掛けに呼応して、となりのリビングから赤毛の細身のツンとしたお姉さん系の美女を先頭に、モデルでもしたらどうかと言う長身の青年と可もなく不可もない飄々とした風貌の男性が入って来た。  「おはようって綾……どうしたの!」  「真理さんおはようございます。ところでどうしたのって、私に何か?」  「イヤ……別に何もないわ」  真理は綾から言い知れぬ邪悪なドス黒いオーラを察知したのだが、穏やかな綾の雰囲気に触れてはいけない爆発物だと悟り、素知らぬフリを選択した。  しかしその腐心も、男と言う不粋かつ無神経な生き物に台無しにされる。
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