第1話

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昼休みが終わって、秦野が教室に戻って来ると、 「ちょっと、誰よ! あんな事したのは!」 と、かなり怒った様子で入って来た。怒るのは勝手だが、 僕達三人に向かって言われても困る。 まるで犯人が、三人の中にいるみたいだ。 「まあ落ち着け。ところで秦野は昼、何処で食べてたんだ?」 「今日は美香ちゃんと中庭で食べてたわよ。天気もいいしね」 美香は秦野の隣の家に住む、一歳下の女子だ。 昔から仲がよく、相模とも上手くやっている。 中庭は自分達の教室から少し離れている。井原が続けた。 「じゃあ見てない訳だ」 「どう言う事よ」 「今日は屋上で食ってると思ってたから」 「屋上は今日は駄目だって言われたのよ。柵が痛んでいて、取り替え作業があるからって」 井原は何かを考えているようだったが、 品川の空気を読まない言葉で、その考えを聞く事が出来なかった。
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