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ちょっとやってみたかっただけの裕子は火を待ったが、龍二は首を傾げて、やっと感づいたか、フリント・ホイールを数回、回転させ、ようやく火を点した。
裕子は、なるほどこういうサービスは店のホストクラブとは違うんだな、とこの実験結果に満足する。
「……ふーっ、ありがとう。ごめんね、興味本位でやってみた」
「謝る事ないですよ、ホストごっこ、俺も初めてで気づくの遅くなっちゃった」
床に座っている龍二は顔を上げ、裕子に笑いかける。
嫌味のつもりとも取れるのに、なんだか和む結果となってしまった。
裕子は龍二の前で初めて、薄くだが、笑った。
そうしてやっと、龍二は床ではなくソファーに、裕子の隣に腰を下ろす。
ソファーの沈みの反動で、裕子の身体も少し揺れ、落ち着いた時、裕子の気持ちも少し落ち着いてきた事に気づく。
同じくらいの高さで目線がぶつかるのも、悪くはない。
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