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龍二は裕子よりも頭半分くらい背が高い。
立った時にそれが分かるが、座るとそうでもない。
俺もいいですか、と言った龍二もボストンバッグから煙草を取り出し、吸い出した。
裕子のジッポが気に入ったのか、かちゃんかちゃん、とケースを指で弾いている。
好きな音だ。
繰り返し同じ音が何回もする。
指遊び、耳遊びとして裕子もジッポを貰った時に何度も繰り返しやったものだ。
裕子はタール六ミリの煙草、龍二はメンソールタイプの煙草を。
嗅ぎ慣れないメンソールの匂いが鼻につく。
苛立ちにも似た、鋭い、すん、とした匂いに鼻をこすった時、龍二の低く、重い静かな声がした。
「……話、聞いて欲しそうな顔してる」
思わず瞬きを忘れ、龍二を見つめてしまった。
不自然に目を反らし、ゆっくりと頬に手を当てる。
見透かされてしまった。
それが、恥ずかしかった。
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