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煙草だけのせいじゃないのは分かっている。 吐き気みたいなものが、胃から、心から湧いて、喉や口の中に溜まっていたのだ。 それを出そうと、出す時がきたから、その必死の声を押し出そうとしているからだと、分かっている。 裕子は落ち着かせようと、缶を逆さにしてビールを呑み干した。 かつん、とガラステーブルに缶を置き、ゆっくりと炭酸を含んだ息を吐く。 これから口にする事は、炭酸のように弾けとんでしまえばいい、と。 「……長い事付き合ってた男がさ、結婚するの。まだ別れてないはずなんだけど、他の女と。私じゃなくて、ね。昨日、知ったの。ブログで幸せ報告ってやつ、見ちゃったのよ」  雅文はインターネットブログを趣味としていて、付き合う前から書いていると教えてくれた。 日常の他愛もない出来事、趣味の事、面白おかしく書く。 そういうものに全く興味がない裕子はその楽しさは分からないが、特に嫌とも思わず、読む事もなかった。
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