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消えろと念じては浮かぶこの繰り返し、雅文の文字に、裕子はもう疲れていた。
「……皆様に報告です。この度結婚する事になりました。式は二ヵ月後です。色々しなければならない事があって、報告遅れました。指輪もオーダーメイドで頼んで仕上がりが楽しみです。言っておきますが、マジです……ははっ」
我慢したが、裕子は笑ってしまった。
そしてまたため息をつく。
龍二はマウスを握り、画面下へとマウスをスクロールし、書き込まれたコメントなどを見ていた。
ガラステーブルをこするマウスが、かちかち、と、さっきから鳴っている。
何を見ているのか、読んでいるのか。先ほど裕子が声に出した通りの内容で間違いはない。
だが裕子も何度も読み返していた事を思い出す。
繰り返し、繰り返し、真実の間違いを探していたという事を。
龍二は何を思っているのだろう、裕子は天井に向けていた顔を元に戻し、煙草を手にとった。
安物のジッポを数秒見つめ、火を点す。
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