32/44
前へ
/242ページ
次へ
 恋愛が自然消滅で終わるなんて、裕子には考えられない。 むしろ、そういう別れがどうやったら出来るのかが分からない。 そういう経験もないが、何よりも嫌悪感がある。 人なら、口があるならきちんと一言あるべきだと考えるからだ。 そういう筋というものを通さないなんて、許せない、大嫌い、そう、大嫌いだ。 たかが恋愛の男女のもつれかもしれない。 そのたかがは、裕子の中では重要なのだ。 人が人に関わっているのだから。 それほど、今の裕子を大きく揺らしているからに他ならない。 まして、他に女がいるというのなら、それはそれで説明も、欲しい。 「何も、しないんですか?」  龍二が発した問いに、はっ、とした裕子は、蘇る過去から戻った。 蘇るなんて、近すぎて笑えるが思い出というよりは、過去と表したい。 「……何も、しない?」
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1207人が本棚に入れています
本棚に追加