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ついさっき照れた気持ちなど、吹き飛んだ。
何て言いやがったか、と裕子は目を力いっぱい見開き、龍二を睨んだ。
惨めって、私が、と裕子は、ぎりり、と奥歯を噛み締める。
あんた、と言われた事にも腹が立った。
「……言ってくれるじゃない」
「だってそうでしょう? 何もしないで何やってんですか。黙ってらんないでしょう? 六年でしたっけ、それなら尚更だ」
「わかってるわよ! でも、だって……私が騒いだところでただの痛い女だわ!」
痛い女。
そう、やっと言葉にして理解した。
裕子は痛い女になりたくないから、動けないでいたのかもしれないと。
だが違う。
こうやって何もしないでいるのも、痛い女なんだ。
龍二は、厳しい一言で教えてくれたのだ。
「ガキのくせに……」
「関係ないっすよ。俺らだって痛いのは痛いし、悔しいのは悔しい。同じですよ。だけどやるんです、自分のために」
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