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自分のために動くなんて、そんな当たり前の事を今の裕子は考えもつかないでいた。
その前に何をしようとも思っていない。
考える事は考えた。
でもそれは、雅文がどう思っていたのか、思うのか、結婚相手は裕子の事を知っているのか、知らないのか。
他人の事ばかりだった気がする、と裕子は思い返す。
一瞬でも、数秒でも、そう考えていた。
龍二の言う若さなんて理由にならない。
いい大人だって、気持ちは同じだ。
裕子は立ち上がり、二本目の缶ビールを取りに行った。
続けて龍二にももう一本、と両手に缶ビールを握る。
龍二にその一本をまたも投げ渡し、龍二を跨いでソファーに座る。
プルタブを開け、勢いよく呑み出した。
「げふっ……あーごめん」
「いいっすよ、ほら、今も落ち着かせようと自分で動いた。動くのは意外に簡単です」
「これは、ね」
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