赤い胸

２

「裕子さんは被害者みたいなもんです。痛かろうが何だろうが、悪くないんですよ」

　むしろ動かないなんておかしい、このまま隠れている事なんてない、と龍二はまたジッポのケースをかちゃんかちゃん、と開け閉めする。

　かちゃん、ぱち、かちゃん、ぱち、かちゃん、ぱち。

　何十回か鳴った後、裕子は龍二を見据えた。

「何、すればいい？」

　煙草を咥えた裕子に、ジッポの火を点した龍二はにやりと口角を上げながら、煙草に火をつけてくれる。

「まず、俺を雇ってください」

「は？」

「手伝うって言ってんですよ」

　龍二はアイドル並のウインクをばちん、と裕子に見せ、自分の煙草にも火をつけ、ばちっ、とジッポのケースを閉じた。

裕子はまたも眉間に皺を作る事になる。