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爽やかで上手いウインクは結構だが、楽しんでる風なのがいただけない。 いや、第三者から見れば裕子はいわゆるメシウマな状態だ。 飯が美味い。 メシウマ。 他人の不幸ほど美味いものはないとは良く言ったものだ。 蜜のように甘いかは知らないが、格好の餌なのは間違いない。 それを味わいながら手伝うとは、なんとも酔狂で、悪趣味。 しかし雇うという事はどういう事だろうか、と裕子は吐いた煙草の煙が消えていくのを見届けた。  龍二を雇うというのは、今の状況とそう変わりがないように思う。 買う、という表現の方が正しい。 裕子は始まっている龍二の三時間を金で買っているのだ。 「店を通すとピンハネ厳しいんですよ。なので直で買ってください」  なるほど。 だが裕子は考える。 金はある。 出張ホストの一度や二度、三度くらいなんて事ないくらいに。 かと言って、人に頼むのはどうかと思う。 だが自分一人でいても、今の状況のままだとも思う。
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